2015年3月10日火曜日

第18回 はり師・きゅう師 国家試験問題の解答と解説(解剖)

平成22年(2010年)に行われた第18回 はり師・きゅう師国家試験の中から解剖学に該当する問題の解答と解説をまとめました。









●問15結合組織の細胞について正しい記述はどれか。≪人体の構成≫
1.形質細胞はTリンパ球から分化した細胞である。
2.大食細胞の細胞質には大量のリソソームが含まれる。
3.脂肪細胞の細胞質はコレステロールで占められる。
4.肥満細胞の細胞質は大量の中性脂肪で占められる。












解答
2

解説
1.形質細胞はBリンパ球から分化した細胞である。
2.大食細胞の細胞質には異物を処理するために大量のリソソームが含まれる。よってこれが正解である。
3.脂肪細胞の細胞質は大量の中性脂肪で占められている。
4.肥満細胞は大量の顆粒を抱え込んでいる。顆粒にはヒスタミンが含まれている。








●問16四肢の筋において停止腱内に種子骨があるのはどれか。≪運動器系/上肢≫≪運動器系/下肢≫
1.上腕二頭筋
2.上腕三頭筋
3.大腿四頭筋
4.下腿三頭筋













解答
3

解説
大腿四頭筋は膝蓋骨を介して膝蓋靭帯をへて脛骨粗面に付着する。膝蓋骨は大腿四頭筋の停止腱の中にできた種子骨であり、膝蓋靭帯はもともと大腿四頭筋の停止腱である。






●問17肩の筋において上腕を外転させるのはどれか。≪運動器系/上肢≫
1.棘上筋
2.棘下筋
3.肩甲挙筋
4.肩甲下筋














解答
1

解説
1.棘上筋の作用は肩関節の外転である。よってこれが正解である。
2.棘下筋の作用は肩関節の外旋である。
3.肩甲挙筋は肩甲骨を上内方に引く。
4.肩甲下筋の作用は肩関節の内旋である。







●問18上肢の筋において橈骨神経によって貫かれるのはどれか。≪運動器系/上肢≫≪神経/末梢神経≫
1.烏口腕筋
2.円回内筋
3.回外筋
4.腕橈骨筋














解答
3

解説
1.烏口腕筋は筋皮神経に貫かれる。
2.円回内筋の上腕頭と尺骨頭の間を正中神経が通る。
3.回外筋は橈骨神経の深枝に貫通される。よってこれが正解である。
4.腕橈骨筋は橈骨神経に支配されるが、貫かれるわけではない。







●問19胸部の器官について後縦隔にあるのはどれか。≪消化器系≫≪呼吸器系≫
1.胸腺
2.食道
3.心臓
4.大動脈弓














解答
2

解説
縦隔とは左右の肺と胸骨、脊柱に囲まれた胸郭の中央部のことである。心臓より上方の上部と下方の下部に分けられる。下部はさらに心臓を中心として前・中・後部に区分される。
上部
胸腺、気管、食道、大動脈弓、上大静脈、奇静脈、胸管
前部
胸腺の下部
中部
心臓、上行大動脈、肺動脈、肺静脈
後部
気管支、食道、胸大動脈、胸管、迷走神経、交感神経幹








●問20下鼻道に開口するのはどれか。≪運動器系/全身の骨格≫
1.耳管
2.上顎洞
3.蝶形骨洞
4.鼻涙管















解答
4

解説
1.耳管は鼓室の前方と咽頭をつなぐ。
2.上顎洞は中鼻道に開く。
3.蝶形骨同は鼻腔の後上方に開く。
4.鼻涙管は鼻根部にある涙囊と下鼻道をつなぐ。よってこれが正解である。









●問21内分泌腺について誤っている記述はどれか。≪内分泌系≫
1.松果体は神経組織から構成される。
2.甲状腺の傍濾胞細胞からカルシトニンが分泌される。
3.下垂体には門脈系が形成される。
4.副腎皮質の細胞はクロム親和細胞と呼ばれる。















解答
4

解説
設問1~3は正しい。
4.副腎髄質の細胞は交感神経細胞と起源を同じくする神経由来の細胞で、交感神経細胞と同様に重クロム酸カリを含む染色液で黄褐色に染まるところからクロム親性細胞と呼ばれる。よって設問4が誤りであるため、これが正解である。









●問22血管の構造について正しい記述はどれか。≪循環器系≫
1.心臓に近い大血管では弾性線維よりも平滑筋線維が多い。
2.顔面の静脈は弁が豊富である。
3.門脈の構造は静脈と同じである。
4.毛細血管には平滑筋が含まれる。
















解答
3

解説
1.心臓に近い大血管では心臓の力強い拍出に対して血管壁が弾力性を持って応じる必要があり、平滑筋よりも弾性線維の量が多い。
2.静脈弁は体肢の静脈に最も多く、逆にヒトの頭頸部には大きな静脈の合流する場所を除いてはほとんど弁を認めない。これは頭頸部が自然の位置では心臓よりも高く、血流は重力や遠心力によって逆流することが少ないからである。また、上下の大静脈やこれに注ぐ太い根には弁はなく、胸腔や腹腔の中にある静脈も無弁のものが多い。
3.動脈が毛細血管を経ていったん静脈になった後、再び毛細血管網を形成して、第2の静脈に注ぐことがある。この場合、第1の静脈を特に門脈と呼ぶ。よって門脈は上述のような静脈の別名であるため、構造は静脈と同じである。よってこれが正解である。
4.毛細血管の壁は、単層扁平上皮の内皮細胞によって構成され、内皮細胞を基底膜が裏打ちするのみで、平滑筋や弾性線維などは欠如する。














●問23胸腹部の動脈について正しい記述はどれか。≪循環器/動脈≫
1.気管支動脈は上行大動脈から分枝する。
2.腹腔動脈は回腸に分布する。
3.上腸間膜動脈は直腸に分布する。
4.卵巣動脈は腹大動脈から分枝する。















解答
4

解説
1.気管支動脈は胸大動脈から分枝する。
2.腹腔動脈は腹大動脈から分枝したのち、左胃動脈・脾動脈・総肝動脈に分かれ、胃から十二指腸・脾臓・肝臓・胆嚢・膵臓を中心とした上腹部の内臓を養う。
3.上腸間膜動脈は膵臓や小腸全域から大腸前半部(横行結腸)までを養う。直腸を養うのは下腸間膜動脈である。
4.卵巣動脈や精巣動脈の性腺動脈は腹大動脈から分枝する。よってこれが正解である。







●問24門脈系について下大静脈との側副循環路となるのはどれか。≪循環器/門脈≫
1.膀胱静脈叢
2.前立腺静脈叢
3.子宮静脈叢
4.直腸静脈叢
















解答
4

解説
門脈は、主に脾静脈・上腸間膜静脈・下腸間膜静脈が合してできた特別な静脈である。この門脈には以下の代表的な3つの側副路がある。
①胃の静脈をへて、食道下部にある静脈叢に流れ込み、食道静脈から奇静脈をへて上大静脈に注ぐ。
②直腸の静脈をへて、直腸下部(肛門周囲)の静脈叢に流れ込み、骨盤の静脈(内腸骨静脈)から総腸骨静脈をへて下大静脈に注ぐ。
③肝臓の下面と臍を結ぶ臍傍静脈をへて臍周囲の皮静脈に流れ込み、腹壁の静脈を経て上下の大静脈に注ぐ。
よって「4.直腸静脈叢」が正解となる。






●問25中枢神経系について正しい記述はどれか。≪神経系/中枢神経≫
1.神経線維の集まっているところを白質という。
2.神経膠細胞の数は神経細胞とほぼ等しい。
3.星状膠細胞は血球に由来する。
4.シュワン細胞が髄鞘形成にあたる。
















解答
1

解説
1.神経線維の集まっているところを白質と呼び、神経の細胞体が集まっている場所を灰白質と呼ぶ。よってこれが正解である。
2.神経膠細胞は神経細胞やその突起の間の隙間を満たしており、その数は神経細胞の510倍である。
3.星状膠細胞は神経細胞と血管との間に介在し栄養の吸収の仲立ちをし、さらに、血液の中を流れる有害物質が脳内へ侵入するのを阻止する血液脳関門の形成にもあずかる。血球に由来すると考えられているのは小膠細胞であり、マクロファージと同じく食作用を持ち異物や有害物質の除去にあたる。
4.中枢神経において髄鞘を形成するのは希突起膠細胞である。シュワン細胞は末梢神経において髄鞘を形成する。








●問26小脳について正しい記述はどれか。≪神経系/中枢神経≫
1.小脳は間脳の背面にある。
2.小脳皮質は白質である。
3.小脳核は髄質にある。
4.下小脳脚は中脳と連絡する。
















解答
3

解説
1.小脳は、大脳の後下面に接し、橋と延髄の背面にかぶさるように隆起する。
2.小脳の表層の小脳皮質は灰白質であり、深部にある小脳髄質は白質である。
3.小脳核(歯状核など)は小脳髄質に存在する灰白質である。よってこれが正解である。
4.下小脳脚は延髄と連絡する。上小脳脚は中脳と、中小脳脚は橋と連絡する。









●問27脳神経において正円孔を通るのはどれか。≪神経/末梢神経≫
1.視神経
2.眼神経
3.上顎神経
4.外転神経
















解答
3

解説
1.視神経は視神経管を通る。
2.眼神経は上眼窩裂を通る。
3.上顎神経は正円孔を通る。よってこれが正解である。
4.外転神経は上眼窩裂を通る。








●問28頭部において迷走神経が分布するのはどれか。≪神経/末梢神経≫
1.耳下腺
2.外耳道
3.鼓室
4.鼓膜張筋
















解答
2

解説
1.耳下腺には舌咽神経が分布する。
2.迷走神経の感覚性線維は耳介および外耳道の皮膚の一部に分布する。よってこれが正解である。
3.舌咽神経の枝である鼓室神経は知覚神経を鼓室に分枝する。
4.鼓膜張筋へは三叉神経の第3枝である下顎神経が分布する。






●問29下肢の神経において枝が足背に分布しないのはどれか。≪神経/末梢神経≫
1.閉鎖神経
2.大腿神経
3.脛骨神経
4.総排骨神経















解答
1

解説
1.閉鎖神経は外閉鎖筋および内転筋群に筋枝を出した後、大腿内側へ皮枝をだす。足背には枝をださないので、これが正解である。
2.大腿神経は縫工筋および大腿四頭筋に筋枝を出すほか、皮枝として大腿前面に分布する前皮枝および伏在神経を分枝する。伏在神経は下腿内側や足背内側の感覚を担う。
3.脛骨神経の枝である腓腹神経は、下腿の遠位部、踵部、足背の外側部の皮膚感覚を担う。
4.総腓骨神経は浅腓骨神経と深腓骨神経に分かれる。浅腓骨神経は下腿の遠位部で皮枝となって皮下に出て内側および中間足背皮神経として足背に分布する。深腓骨神経は母指と第2趾の間(下駄の鼻緒が食い込む部分)の皮膚に分布して感覚を担う。








●問30内耳において膨大部稜があるのはどれか。≪感覚器≫
1.半規管
2.球形囊
3.卵形囊
4.蝸牛

















解答
1

解説
膨大部稜は半規管の膨大部というふくらみの内面に存在する。有毛感覚細胞の直線状の高まりであり、身体の回転運動の方向と加速度を感じる。








<参考>



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