2015年2月24日火曜日

第23回 はり師・きゅう師 国家試験問題の解答と解説(解剖)

平成27年(2015年)に行われた第23回 はり師・きゅう師国家試験の中から解剖に該当する問題の解答と解説をまとめました。







●問16.線維性の連結はどれか。≪人体の構成≫≪運動器系/総論≫
1.釘植
2.仙腸関節
3.恥骨結合
4.椎間関節







解答
1

解説
線維性の連結とは2つの骨の間が線維性結合組織で結合されているもので、靭帯結合、縫合、釘植の3種に区別される。
1.歯根の表面と歯槽骨の間の結合で、結合組織性の歯根膜が両者を結合する。線維性連結であり、これが正解である。
2.仙腸関節は滑膜性の連結に分類される。
3.恥骨結合は密性結合組織の中に軟骨質が散在する線維軟骨ででき、円板状の構造で2つの骨が連結される軟骨性の連結である。
4.椎間関節は滑膜性の連結に分類される。






●問17.頭蓋骨で2個あるのはどれか≪運動器系/全身の骨格≫
1.篩骨
2.鋤骨
3.鼻骨
4.舌骨





解答
3

解説
1.篩骨は、蝶形骨体の前、前頭骨の後ろにある骨で、内頭蓋底でもあり、鼻腔の上部でもあるほか、眼窩の構成にも関与する。人体に1つ存在する。
2.鋤骨は、篩骨の垂直板の下方で鼻中隔の下部をつくる板状の骨で、靭帯に1つ存在する。
3.鼻骨は、鼻根部をつくる長方形の小さな扁平骨で、左右1対ある。よってこれが正解である。
4.舌骨は、甲状軟骨の上方にある馬蹄形の骨で、顔面骨から完全に遊離し、筋の付着によってその位置を保っている。







●問18大結節稜に停止する筋はどれか。≪運動器系/上肢≫≪運動器系/体幹≫
1.大胸筋
2.大円筋
3.小円筋
4.広背筋






解答
1

解説
1.大胸筋の起始は鎖骨内側1/2、胸骨と肋軟骨、腹直筋鞘であり、停止は上腕骨大結節稜である。よってこれが正解である。
2.大円筋の起始は肩甲骨下角であり、停止は小結節稜である。
3.小円筋の起始は肩甲骨外側縁であり、停止は大結節である。
4.広背筋の起始は棘突起(第7胸椎以下の胸椎・腰椎・仙骨)、腸骨稜、第912肋骨、肩甲骨下角であり、停止は上腕骨小結節稜である。






●問19.腋窩リンパ節に還流する領域はどれか≪循環器系/全身の骨格≫
1.顎下三角
2.筋三角
3.後頸三角
4.聴診三角





解答
4

解説
左の頭頸部のリンパは左の頸リンパ本幹から胸管へと流れる。左上肢、左の胸部浅層、左上背部浅層のリンパは腋窩リンパ節から鎖骨下リンパ本幹をへて胸管へと流れる。胸管のリンパは静脈角を経て静脈へともどる。
1.顎下三角は顎二腹筋の前腹、後腹と下顎骨で囲まれる部分である。頸リンパ本幹へと流れる。
2.筋三角は正中線、舌骨、肩甲舌骨筋と胸鎖乳突筋で囲まれる部分である。頸リンパ本幹へと流れる。
3.後頸三角は胸鎖乳突筋後縁、僧帽筋の外側縁と鎖骨で囲まれた部分であり、後頸部と後頭部のリンパ管が集流する部位である。頸リンパ本幹へと流れる。
4.聴診三角は広背筋、僧帽筋と菱形筋で囲まれた部分であり、肩甲骨内縁付近の下方に存在する。背部浅層のリンパは上半部では腋窩リンパ節に、下半部では鼠径リンパ節に注ぐ。よってこれが正解である。






●問20.静脈と開口部の組合せで正しいのはどれか≪循環器系/静脈≫
1.海綿静脈洞 ――― 外頸静脈
2.食道静脈 ―――― 奇静脈
3.橈側皮静脈 ――― 上腕静脈
4.門脈 ―――――― 下大静脈





解答
2

解説
1.海綿静脈洞は脳の表面の血液を集める硬膜静脈洞のひとつである。静脈洞の血液は、脳底に集められ、頸静脈孔を貫き、内頸静脈へと流れる。
2.食道静脈は奇静脈に注ぐ。よってこれが正解である。
3.橈側皮静脈は、上腕二頭筋外側縁の上方から三角筋の前縁に沿って上行し、三角筋前縁と大胸筋外側縁と鎖骨の下縁とで囲まれたくぼみ(鎖骨胸筋三角、別名:鎖骨下窩)から腋窩内に入って腋窩静脈に注ぐ。
4.門脈は、主に脾静脈・上腸間膜静脈・下腸間膜静脈が合してできた特別な静脈である。肝臓の中で小葉間静脈となる。













●問21.声帯靭帯が付着するのはどれか≪呼吸器系≫
1.甲状軟骨
2.喉頭蓋軟骨
3.小角軟骨
4.輪状軟骨






解答
1

解説
披裂軟骨の前端から甲状軟骨の後面に、ヒモ状の声帯靭帯とそれに沿う声帯筋が伸びる。








●問22.上行結腸について正しいのはどれか≪消化器系≫≪循環器系≫
1.肝臓の方形葉下面に接する。
2.脾臓に接する。
3.右結腸動脈が分布する。
4.輪状ヒダを持つ。




解答
3

解説
1.肝臓と接するのは横行結腸であり、肝臓の右葉の底面の外前方には結腸圧痕が存在する。
2.脾臓は腹腔の左側に存在し、上行結腸は腹腔の右側に存在するのでお互いが接することはない。
3.右結腸動脈は上腸間膜動脈の枝であり、上行結腸に分布する。よってこれが正解である。
4.輪状ヒダを持つのは小腸である。大腸にあるのは半月ヒダである。








●問23鼠径管を通過するのはどれか。≪≫
1.子宮円索
2.臍動脈索
3.卵巣堤索
4.固有卵巣索





解答
1

解説
鼠径管には男性では精管と精巣動・静脈を含む精索が、女性では子宮円索という結合組織のひもが通る。
1.上述のとおり、子宮円索は鼠径管を通過するため、これが正解である。
2.臍動脈索は、胎児循環で利用されていた臍動脈が生後に変化したものである。臍動脈は胎児期に内腸骨動脈から胎盤へと静脈血を運んでいる。
3.卵巣堤索は卵巣と骨盤壁をつないでいる。
4.固有卵巣索は卵巣と子宮壁をつないでいる。








●問24.硬膜について正しいのはどれか≪神経系≫
1.硬膜は2葉からなる。
2.小脳鎌は大脳と小脳の境となる。
3.硬膜静脈洞は硬膜の内側に形成される。
4.硬膜外腔は脳脊髄液により満たされる。





解答
1

解説
1.硬膜は脳と脊髄を覆う3枚の結合組織性の膜の最外層をなす厚い膠原線維の膜で内外2葉からなる。
2.大脳と小脳の境となるのは小脳テントである。小脳鎌は左右の小脳半球の間に落ち込んだ脳硬膜のことである。左右の大脳半球の間に落ち込んだ脳硬膜は大脳鎌と呼ばれる。
3.硬膜静脈洞は硬膜の外葉と内葉の間に存在し、脳表面の血液を集める。
4.脳脊髄液は、クモ膜と軟膜の間のクモ膜下腔を満たしている。






●問25脊髄神経の後枝に由来するのはどれか。≪神経系/末梢神経≫
1.大後頭神経
2.肋間神経
3.橈骨神経
4.下殿神経





解答
1

解説
椎間孔をへて脊柱管を出た脊髄神経は、直ちに前枝と後枝に分かれる。前枝は体幹の腹側にある体壁や、上肢・下肢の筋や皮膚に分布する。後枝は、体幹の背側にある固有背筋と背中の皮膚に分布する。
1.大後頭神経はC2の後枝に由来する皮枝である。よってこれが正解である。
2.Th111の前枝は肋間神経として胸部・腹部の皮膚と筋を支配する。
3.橈骨神経は腕神経叢の後神経束由来である。腕神経叢はC58T1の前枝によってつくられる。
4.下殿神経は仙骨神経叢由来の神経で、L5S2が合流して神経叢から出たものである。仙骨神経叢はL45S15の前枝によって構成される。






●問26.皮膚について正しいのはどれか≪人体の構成/皮膚≫
1.自由神経終末は侵害刺激を受容する。
2.成人の右上肢は総面積の15を占める。
3.パチニ小体は真皮乳頭に存在する。
4.表皮は有棘細胞の分裂によって増殖する。






解答
1

解説
1.侵害刺激とは組織を傷害するような刺激のことである。自由神経終末は痛みと温度覚を感受する。よってこれが正解である。
2.熱傷の広がりを知る目安として知られる「9の法則」によると、一側の上肢の表面積は9%となっている。
3.パチニ小体は皮下組織や関節包などに分布し、振動覚を感受する。真皮乳頭に存在するのはマイスネル小体である。
4.表皮の細胞分裂は最深層である基底層で活発に行われる。






<参考>

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