2015年2月23日月曜日

第20回 はり師・きゅう師 国家試験問題の解答と解説(解剖)

平成24年(2012年)に行われた第20回 はり師・きゅう師国家試験の中から解剖に該当する問題の解答と解説をまとめました。






●問15胸郭上口を通るのはどれか。≪運動器系/全身の骨格≫≪運動器系/頭頸部≫≪神経系≫≪循環器系≫
1.前斜角筋
2.上大静脈
3.交感神経幹
4.副神経





解答
3

解説
胸郭上口は第1胸椎~第1肋骨~胸骨柄の上縁によって構成される。
1.前斜角筋は頸椎の横突起から起始し、第一肋骨の上面に停止するので胸郭上口を通らない。
2.上大静脈は右の第1肋軟骨の後ろで左右の腕頭静脈が合流したもので、心臓へとつながる。よって胸郭上口より下部に存在しており、通過はしていない。
3.頸部の交感神経幹は椎前筋の前に付着しているが、頸髄には交感神経の節前ニューロンは存在せず、胸髄にある交感神経節前ニューロンから起こった交感神経が胸郭上口を通って頸部まで上行してきたものである。よってこれが正解となる。
4.副神経は延髄の疑核や頸髄の副神経核から起始し、喉頭筋や胸鎖乳突筋、僧帽筋などを支配する。いずれも胸郭上口より頭側にあるため、胸郭上口を通過することはない。






●問16側頭骨にあるのはどれか。≪運動器系/全身の骨格≫
1.視神経管
2.翼突管
3.頸動脈管
4.舌下神経管




解答
3

解説
1.視神経管は蝶形骨の基部に存在し、視神経を通す。
2.翼突管は蝶形骨の翼状突起の基部に存在する。
3.頸動脈管は側頭骨の岩様部の錐体を貫通するように存在し、破裂孔へとつながる。よってこれが正解である。
4.舌下神経管は後頭骨の後頭顆の基部を貫くように存在する。







●問17橈骨神経について正しいのはどれか。≪運動器系/上肢≫
1.腕神経叢の外側神経束に由来する。
2.内側腋窩隙を通過する。
3.回外筋を貫く。
4.手掌橈側半の感覚を支配する。




解答
3

解説
1.橈骨神経は腕神経叢の後神経束に由来する。
2.大円筋と小円筋、上腕三頭筋によって外側腋窩隙と内側腋窩隙が構成される。外側腋窩隙には腋窩動脈が、内側腋窩隙には肩甲回旋動脈が通過する。
3.回外筋は橈骨神経の深枝に貫通される。よってこれが正解である。
4.手掌橈側半の感覚を支配するのは正中神経である。






●問18脊柱の靱帯について正しい記述はどれか。≪運動器/全身の骨格≫
1.黄色靱帯は椎体の後面にある。
2.環椎横靱帯は歯突起の後面にある。
3.項靭帯は椎間円板の前面にある。
4.後縦靱帯は椎孔の背側にある。





解答
2

解説
1.黄色靭帯は上下の椎弓を連結する。普通の靭帯は膠原線維の密な束で白っぽいが、黄色靭帯は弾性線維に富み黄色く見える。
2.環椎横靭帯は歯突起の後面にある。よってこれが正解である。
3.棘突起の先端を縦に結ぶ靭帯を棘上靭帯というが、頸部では幅が広く厚くなり、項靭帯と呼ばれる。
4.後縦靭帯は椎体と椎間円板の後面に密着し、椎体を縦に連結する。






●問19起始が1つの骨にある筋はどれか。≪筋系/上肢≫≪筋系/下肢≫
1.上腕二頭筋
2.上腕三頭筋
3.大腿二頭筋
4.下腿三頭筋





解答
1

解説
1.上腕二頭筋は長頭と短頭に分かれる。長頭は肩甲骨関節上結節から、短頭は肩甲骨の烏口突起から起始する。よってこれが答えである。
2.上腕三頭筋は長頭と外側頭、内側頭に分かれる。それぞれの起始は、長頭が肩甲骨関節下結節、外側頭が上腕骨外側面、内側頭が上腕骨後面である。
3.大腿二頭筋は長頭と短頭に分かれる。長頭は坐骨結節から、短頭は大腿骨の粗線外側唇から起始する。
4.下腿三頭筋は腓腹筋とヒラメ筋に分かれる。腓腹筋の起始は大腿骨の内側上顆と外側上顆である。ヒラメ筋の起始は脛骨ヒラメ筋線と腓骨頭である。







●問20大腿骨の粗線に付着する筋はどれか。≪筋系/下肢≫
1.半膜様筋
2.半腱様筋
3.長内転筋
4.薄筋






解答
3

解説
1.半膜様筋の起始は坐骨結節、停止は脛骨内側顆の後部である。
2.半腱様筋の起始は坐骨結節、停止は脛骨粗面の内側部(鵞足部)である。
3.長内転筋の起始は恥骨体の前面、停止は大腿骨の粗線内側唇である。よってこれが正解である。
4.薄筋の起始は恥骨下枝の前面、停止は脛骨粗面の内側部(鵞足部)である。








●問21筋と付着部位について正しい組合せはどれか。≪運動器/体幹≫≪運動器/下肢≫
1.広背筋---上腕骨大結節
2.大胸筋---上腕骨小結節
3.大殿筋---大腿骨大転子
4.大腰筋---大腿骨小転子




解答
4

解説
1.広背筋の起始は第7胸椎から仙骨までの棘突起、腸骨稜、第9~12肋骨、肩甲骨下角であり、停止は上腕骨小結節稜である。
2.大胸筋の起始は鎖骨内側1/2、胸骨、肋軟骨、腹直筋鞘であり、停止は上腕骨大結節稜である。
3.大殿筋の起始は腸骨外面(後殿筋線より後ろ)、仙骨と尾骨の後面、仙結節靭帯であり、停止は大腿骨の殿筋粗面と腸脛靱帯である。
4.大腰筋の起始は全腰椎の肋骨突起、第12~第4腰椎の椎体と椎間円板であり、停止は大腿骨小結節である。よってこれが正解である。








●問22気管支について正しい記述はどれか。≪呼吸器系/気管支≫
1.気管分岐部は第1胸椎の高さである。
2.気管支壁は肺動脈によって栄養される。
3.左気管支は3本の葉気管支に分かれる。
4.右気管支は左よりも垂直に近く傾斜する。





解答
4

解説
1.気管分岐部は心臓の上後方(第5胸椎の高さ)である。
2.気管支壁は気管支動脈によって栄養される。
3.左気管支は2本の葉気管支(上葉気管支、下葉気管支)に分かれる。 右気管支は3本の葉気管支(上葉気管支・中葉気管支・下葉気管支)に分かれる。
4.右気管支は太くて短く、垂直に近く傾斜する。左気管支は細くて長く、水平に近い傾斜を持つ。誤って気管支に吸い込まれた異物は右気管支に、さらには右肺に入りやすい。よってこれが正解である。














●問23膵臓について正しい記述はどれか。≪消化器系/膵臓≫
1.第4・第5腰椎の高さにある。
2.後腹壁に付着している。
3.左端は十二指腸に接している。
4.膵液はランゲルハンス島から分泌される。





解答
2

解説
膵臓は第1・第2腰椎の前を後腹壁に付着して横走する。右から頭・体・尾の3部に分けられ、左端の膵尾は脾臓に接する。膵液は、腺房細胞が集まった腺房とそれに続く導管細胞で囲まれた導管とからなる外分泌腺から分泌される。ランゲルハンス島は膵尾部に存在する上皮細胞の集まった内分泌腺である。ここからはインスリンなどのホルモンが分泌される。






●問24副腎について正しい記述はどれか。≪内分泌系≫
1.髄質からアルドステロンが分泌される。
2.皮質は腹膜上皮に由来する。
3.副腎には間膜がある。
4.副腎からのホルモンは門脈に分泌される。





解答
2

解説
1.副腎髄質からはカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン)が分泌される。アルドステロンは副腎皮質の顆粒層(球状帯)から分泌される。
2.副腎皮質は腹膜上皮から発生する中胚葉性器官である。よってこれが正解である。副腎髄質は交感神経細胞と起源を同じくする神経由来の外胚葉性器官である。
3.副腎は後腹膜器官であるため、間膜はもたない。
4.副腎からのホルモンは腎静脈もしくは下大静脈に分泌される。






●問25腹大動脈から起こる枝について正しい記述はどれか。≪循環器系/動脈≫
1.腹腔動脈は脾臓を養う。
2.腎動脈は第4腰椎の高さで起こる。
3.下腸間膜動脈は回腸を養う。
4.精巣動脈は鼡径靱帯の深層を通る。




解答
1

解説
1.腹腔動脈は腹大動脈から分かれたあと、左胃動脈、脾動脈、総肝動脈に分岐する。これらによって胃・十二指腸・脾臓・肝臓・胆嚢・膵臓が養われる。よってこれが正解である。
2.腎動脈は第1腰椎の高さで腹大動脈からでる左右1対の太い動脈である。
3.下腸間膜動脈は大腸後半部(下行結腸から直腸)に分布する。回腸を養うのは上腸間膜動脈であり、その他、膵臓・空腸・大腸前半部(横行結腸まで)を養う。
4.精巣動脈は、精索に包まれて側腹壁の下縁に開いた鼡径管を通って精巣に達する。







●問26刺激伝導系について正しい記述はどれか。≪循環器系/心臓≫
1.神経線維により構成される。
2.プルキンエ線維は心外膜下を走行する。
3.房室結節は右心室にある。
4.ヒス束は線維三角を通る。





解答
4

解説
1.刺激伝統系は特殊心筋線維によって構成される。
2.心室中隔を下行した右脚と左脚は、それぞれ右心室と左心室の壁で刺激伝導系の終末であるプルキンエ線維となり、心内膜下を細かく分枝しながら網の目のように走行する。
3.房室結節は右心房の下壁にある特殊心筋線維の密な塊である。
4.ヒス束は房室弁の周囲を固定する線維三角を貫通して心室中隔に達し、右脚と左脚に分かれる。よってこれが正解である。








●問27皮神経で大腿神経の枝はどれか。≪神経系/末梢神経≫≪運動器系/下肢≫
1.陰部大腿神経
2.外側大腿皮神経
3.腓腹神経
4.伏在神経




解答
4

解説
1.陰部大腿神経はL12が合流して構成され、大腰筋の前を下行しつつ、陰部枝と大腿枝に分かれる。
2.外側大腿皮神経はL23が合流して構成される。大腿神経とともに大腰筋と腸骨筋の間を通って腸骨筋の表面を外側下方に向かって走り、上前腸骨棘付近で鼡径靭帯の下の筋裂孔をくぐって大腿外側部に出る皮神経である。
3.腓腹神経は、脛骨神経の皮枝である内側腓腹皮神経と総腓骨神経の枝とが合流して構成される。下腿の遠位部・踵部・足背の外側部の皮膚感覚を担う。
4.大腿三角を通過した大腿神経は皮枝として、大腿前面に分布する前皮枝および伏在神経を分枝する。伏在神経は、大腿動静脈とともに内転筋管を通る途中で大内転筋と内側広筋の間に張る筋膜を貫通し皮下に出る。鵞足付近で膝蓋下枝および内側下腿皮枝となって下腿内面や足背内側の感覚を担う。









●問28脳幹について正しい記述はどれか。≪神経系/中枢神経≫
1.橋は脳幹に含まれる。
2.オリーブ核は錐体路に関与する。
3.延髄には四丘体がある。
4.中脳には孤束核がある。





解答
1

解説
1.中脳・橋・延髄は大脳を支える幹のように見えるところから脳幹と呼ばれる。よってこれが正解である。
2.オリーブ核は延髄外側部のオリーブという楕円形の隆起の中に存在する。赤核・小脳・脊髄と線維結合をもち、錐体外路性の運動に関与する。
3.四丘体が存在するのは中脳背側部である。
4.孤束核は延髄に存在する。









●問29脳神経と副交感神経節との組み合わせで正しいのはどれか。≪神経系/自律神経・脳神経≫
1.動眼神経---毛様体神経節
2.顔面神経---耳神経節
3.舌咽神経---翼口蓋神経節
4.迷走神経---上頸神経節





解答
1

解説
1.動眼神経の副交感線維は毛様体神経節をへて、眼球内の瞳孔括約筋と毛様体筋に分布する。よってこれが正解である。
2.顔面神経の副交感線維のうち、涙腺を支配する節前線維は大錐体神経を経由して翼口蓋窩にある翼口蓋神経節に入る。顎下腺と舌下腺の分泌を促進する節前線維は、舌下で顎下神経節に入る。耳神経節と関係あるのは後述の舌咽神経である。
3. 舌咽神経の副交感線維は、鼓室への枝を経由し耳神経節に達する。翼口蓋神経節と関係があるのは上述の顔面神経である。
4.迷走神経は、舌咽神経・副神経とともに頸静脈孔を出たのち、感覚性の上・下神経節をつくる。上頸神経節は頸部に存在する最大の幹神経節であり、交感神経線維に由来する。









●問30感覚と伝導路との組合せで正しいのはどれか。≪神経系/末梢神経・伝導路≫≪感覚器系≫
1.視覚---内側毛帯
2.触圧覚--外側毛帯
3.聴覚---下丘
4.味覚---唾液核




解答
3

解説
1.視覚の感覚情報は視細胞→双極神経細胞→神経節細胞→視神経→視神経交叉→視索→外側膝状体→視放線→後頭葉の視覚野へと伝わる。視索の線維の一部は中脳の上丘に送られ、瞳孔反射に関係する。内側毛体は触圧覚刺激をつたえる長後索路の一部である。
2.触圧覚の刺激情報はマイスネル小体やパチニ小体などの感覚受容器から脊髄後根→同側の後索→延髄の後索核→左右交差して反対側の内側毛帯→延髄、橋の背側部、中脳被蓋の腹外側→視床→内包→中心後回にある体性感覚野へと伝わる。 外側毛帯は聴覚の伝導に関与する。
3.聴覚刺激は内耳の蝸牛→蝸牛神経核→交叉して外側毛帯→中脳の下丘→間脳の内側膝状体→聴放線→側頭葉の聴覚野へと伝わる。よってこれが正解である。
4.味覚刺激は舌の味蕾→顔面神経・舌咽神経→延髄の孤束核→視床→中心後回の下部にある味覚野へと伝わる。唾液核は上唾液核と下唾液核があり、顔面神経や舌咽神経が起始する。それぞれの脳神経の副交感神経系の働きに関わる。












<参考>

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